10adic対数関数
久しぶりに adicのお話です。
10adicの世界でも指数関数を考えることができるという話は以前していて、例えば
という少し不思議な等式を紹介したこともありました。
ちょっと難しいかもしれませんが、これについては
指数関数の値 (外部サイト)
で証明しています。
今回は10adicの対数関数について考えます。
対数関数は、おそらくべき級数で
として定義するのが普通なのかもしれませんが、ここでは
として定義することにします。こうすると
のように計算することができます。
もう少し詳しい議論は
10adic対数関数 (外部サイト)
にあります。そこにもありますが、10adicの対数表をここにも置いておきます。
log(1) | 0 |
log(3) | 90019823112848576493439314850693280080844278655220 |
log(7) | 5586979560633425174395291992894902155239551280600 |
log(9) | 80039646225697152986878629701386560161688557310440 |
log(11) | 71106824578391282763269738035428724288142750684460 |
log(13) | 30014769227296998141600160323009540423034697535940 |
log(17) | 77971142260363766723683519437401987213489115656080 |
log(19) | 59097584378015115950621606255410805879195081983780 |
log(21) | 95606802673482001667834606843588182236083829935820 |
log(23) | 22382897935058888051413161421448084104977268418760 |
log(27) | 70059469338545729480317944552079840242532835965660 |
log(29) | 97798846647728300178201206031847975543514450928020 |
log(31) | 74644513498439453658032250654972777814723280666080 |
log(33) | 61126647691239859256709052886122004368987029339680 |
log(37) | 80249814295132397773550198179919992890550163533340 |
log(39) | 20034592340145574635039475173702820503878976191160 |
log(41) | 64745144118554374765213360801115040394662590527240 |
log(43) | 88379482971608740644332811581651070573744432674700 |
log(47) | 91657571987339575386944577998212108763538980023120 |
log(49) | 11173959121266850348790583985789804310479102561200 |
log(51) | 67990965373212343217122834288095267294333394311300 |
log(53) | 78742320626571937991693874580140279780945101939820 |
log(57) | 49117407490863692444060921106104085960039360639000 |
log(59) | 91953304298845138284562302282869710563648385166140 |
log(61) | 77359133609393162142709102476025278605993656350260 |
log(63) | 85626625786330578161273921694281462316928108591040 |
log(67) | 3892849449173292185569943358805830308552657324980 |
log(69) | 12402721047907464544852476272141364185821547073980 |
log(71) | 74693570273115371646004562312267147569354532916120 |
log(73) | 42599555499725156685761700061195767362484368824360 |
log(77) | 76693804139024707937665030028323626443382301965060 |
log(79) | 33868393602704118838119506335825578450790416892720 |
log(81) | 60079292451394305973757259402773120323377114620880 |
log(83) | 86477922554355612298593367759952822783542760375780 |
log(87) | 87818669760576876671640520882541255624358729583240 |
log(89) | 19381579402760258090505675317909549813078546370360 |
log(91) | 35601748787930423315995452315904442578274248816540 |
log(93) | 64664336611288030151471565505666057895567559321300 |
log(97) | 17598579544088868577383616313568648143006821543520 |
log(99) | 51146470804088435750148367736815284449831307994900 |
注意:これは「10adic」の対数表です。通常の対数表ではありません。
表をよく見ると、ちゃんと
のように対数法則も成り立っていることが読み取れます。
1の平方根
対数関数の定義から、1の平方根に対して常に
となります。したがって特に
が成立します。ここでルート1は
と選んでいます。
すると
なので、
\begin{align} 0=\log (-\sqrt{1}) &= \log (1 - (\sqrt{1}+1)) \\ &= -\sum_{n=1}^ \infty \frac{ ( \sqrt{1}+1)^n}{n}\\ &= -\sum_{n=1}^ \infty \frac{2^n}{n} \left( \frac{\sqrt{1}+1}{2}\right)^n \\ &= -\sum_{n=1}^ \infty \frac{2^n}{n} \cdot \frac{\sqrt{1}+1}{2} \end{align}
と変形できます。
つまり、
が得られますが、
が5で無限回割れて、2では割れないことから、
が無限回2で割れるようにならなければならないことが分かります。(10adicの世界で0というのは、10で無限回割れることを意味します。)
有限的な主張に言い換えれば、任意に与えられた自然数に対して、充分大きい
を取れば
の分子が で割り切れるということになります。
検証
上で定義した がどれくらい2で割れるのか実験します。
は簡単に計算でき、 は2で1回、
は2で2回割れることがわかります。次は
となりますが、これは2で2回しか割れません。次は
となり、急に2で5回割れるようになります。さらに計算すると
となり、2で8回割れるようになります。勢いがついてきたような気がしますが、
の分子は2で5回しか割れません。次も
で分子はやはり、2で5回しか割れません。こうなると主張自体を疑ってしまいますが、次を計算すると
となり、分子が2で13回割れるようになります。(この場合、分子はちょうど となっています。)
さらに計算していくと、
となり、分子は2で27回割れます。
これくらい計算すると、主張の妥当性も感じられるのではないかと思います。
まとめ
10adic対数関数を考えることで、ダイレクトに証明するのは難しそうな次の主張
を既約分数でまとめた時、分子を望むだけ2で割れるようにNを取ることができる。
を得ることができました。
ちなみにこのような議論は10adicではなく、通常「2adic」の世界でなされるもので、p進界隈では結構有名な話のようです。
追記
いろいろ実験していたところ
予想
を得ました。(左辺の記号 は
で何回われるかというものです.)
一般的な評価としては
くらいは言えて、これから
定理
は言える模様です。