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数学中心のブログです。

収束しない無限和の値を求める

次の無限級数

 \displaystyle 1-1+1-1+\cdots

がどのような値に収束するかについて考えるのが今回のテーマです。

安直に考えれば、01 になりそうですが、

どちらをとってもしっくりきません。

では、どのような値にすべきでしょうか。

本題に入る前に無限和についての概要をまとめます。

無限和が収束する場合

例1.

 \displaystyle \frac{1}{2} + \frac{1}{2^2} + \frac{1}{2^3} + \cdots

は収束して、その値は 1 となります(等比数列の和の公式から証明できます.)

例2.

 \displaystyle 1+ \frac{1}{2^2} + \frac{1}{3^2} +\frac{1}{4^2} + \cdots

も収束します。具体的には

 \displaystyle \frac{\pi^2}{6}

に収束しますが、この値を求めるのは難しいです。

収束性の証明は、

\begin{align*} 1+ \frac{1}{2^2} + \frac{1}{3^2} +\frac{1}{4^2} + \cdots &\leq 1+ \frac{1}{1\cdot 2} + \frac{1}{2\cdot 3} +\frac{1}{3\cdot 4} + \cdots \\ &= 1 + \left( \frac{1}{1}-\frac{1}{2}\right) + \left( \frac{1}{2}-\frac{1}{3}\right) +\left( \frac{1}{3}-\frac{1}{4}\right) \cdots \\ & =2 \end{align*}

という感じでできます。(有界な単調増加列は収束するというお話です.)

無限和が収束しない場合

無限和が収束しないケースには大体二通りあります。

[1] 有限の値に近づかないケース。

[2] 有限であるが、一つに定まらないケース。

例1.

 \displaystyle 1+1+1+\cdots 

は有限の値に近づかないケースで、 \infty に発散するといわれます。

例2.

 \displaystyle 1-1+1-1+\cdots

は、1と0を順番に取り続けるので、一つの値に近づかないケースで、これも収束しないといわれます。

本題

では改めて、収束しない無限和

 \displaystyle s:=1 - 1+ 1- 1+\cdots

について考えていきましょう。

収束しない無限和を求める

これはおかしな話です。

なぜならば、そもそも有限の値が一つに定まらないから「収束しない」といっているはずだからです。

確かに、おかしいかもしれません。ただ別におかしくても良いのです。

常識外のことを切り捨てることも大事かもしれませんが、そんなことばかりしているとなかなか未知の領域に到達できません。実際、数学の歴史を振りかえっても、最初の発見者は常識外の発想を持って当時の数学では疑問視される手法や主張をしていたという話はよくあります。

前置きが長くなりましたが、s の値を実際に求めていきましょう。

考え方1.

部分和を考えると s=0s=1 です。ですがどちらか一方のみが正しいというわけでもなさそうです。そこで全く論理的ではないですが間をとって

 \displaystyle s = \frac{1}{2}

としてみるのはどうでしょうか。

考え方2.

等比級数の和の公式

 \displaystyle 1+x+x^2+x^3+\cdots = \frac{1}{1-x}

について考えます。これは |x| <1 で収束するわけですが、x=-1 を代入してしまいましょう。そうすると

 \displaystyle 1-1+1-1+\cdots = \frac{1}{2}

が得られます。

偶然なのか先ほどの結果と一致します。

考え方3.

一般的に収束しない極限値を求める「チェザロ平均」というものがあります。

それは、

 \displaystyle S_n = a_1+a_2+\cdots +a_n

とおくとき、もし a_n x に収束するならば

 \displaystyle \frac{S_n}{n}

x に収束するということを利用する方法です。つまり、

 \displaystyle \lim_{n\to\infty} a_n =\lim_{n\to\infty} \frac{S_n}{n}

を利用します。これは左辺の収束を仮定したときの話ですが、左辺が収束しない場合、右辺の極限によって左辺の値を定めてしまうという考え方です。

 \displaystyle a_n = \sum_{k=1}^n (-1)^{ k- 1 }

とおくと、a_n の極限は存在しませんが、

 \displaystyle S_{2n} = a_1+a_2+\cdots +a_{2n} =n 

 \displaystyle S_{2n+1} = a_1+a_2+\cdots +a_{2n+1} =n+1 

なのでチェザロ平均は

 \displaystyle \lim_{n\to\infty} \frac{S_n}{n} = \frac{1}{2}

となって収束します。したがってチェザロ平均的な意味でも

 \displaystyle 1-1+1-1+\cdots =\lim_{n\to\infty} a_n =\lim_{n\to\infty} \frac{S_n}{n} = \frac{1}{2}

が得られることになります。

まとめ

全ての議論で怪しいところがありました。しかしそれは当然で、そもそも一つの値にさだまらないものを定めようとしているので、どこかで無茶をする必要があるからです。