Root One

数学中心のブログです。

解析的に1次合同式の解を見つける方法

今回の話は10adicの世界の知識がないと混乱の恐れがありますのでご注意ください。

一次合同式の解の見つけ方

合同式は、様々な方法で解くことができ、このブログでもいくつか解法を紹介してきました。今回はそれに加えて新たに「解析的に解を求める方法」について考えます。

解析的解法1

等比級数の公式

 \displaystyle 1 + x + x^2 + \cdots = \frac{1}{1-x} \tag{1} \label{eq:xx2cdt}

がありますが、これは10adicの世界でも「収束」すれば使用できます。例えば、x=10 とすると左辺は収束するので使用可能です。実際左辺に代入すると

 \displaystyle 1+10+10^2 + 10^3 + \cdots = \cdots 11111

となりますが、これは\eqref{eq:xx2cdt} の右辺にx=10 を代入して得られる結果

 \displaystyle -\frac{1}{9}

と等しくなります。つまり

 \displaystyle \cdots 11111  = -\frac{1}{9}

が成り立ちます(もちろん「10adicの世界において」の成立です)したがって

 \displaystyle \frac{1}{9} = - (\cdots 11111) = \cdots 88889

が得られます。10adicの結果は有限できれば \mod 10^n の世界の話になりますので、

\begin{alignat*}{3} &9x \equiv 1 \mod 10 &\iff &x \equiv 9 &&\mod 10\\ &9x \equiv 1 \mod 10^2 &\iff &x \equiv 89 &&\mod 10^2 \\ &9x \equiv 1 \mod 10^3 &\iff &x \equiv 889 &&\mod 10^3 \\ &9x \equiv 1 \mod 10^4 &\iff &x \equiv 8889 &&\mod 10^4 \\ & & \vdots & && \end{alignat*}

という結果が一斉に得られたともいえます。

解析的解法2

上の解法は、\eqref{eq:xx2cdt} が収束する場合にしか適用できませんでした。

実は、収束はかなり遅いものの、逆数が存在すればいつでも使用できる計算方法があります。それが次の関係式です。

 \displaystyle \frac{1}{x} = 1 + 2(1-x) + 3(1-x)(1-2x) + 4 (1-x)(1-2x)(1-3x) + \cdots \tag{2} \label{eq:fxcdt3}

例1.x=3 を右辺に代入して30項ほど計算すると

 \displaystyle 396577976160048123351257310299344398363306666667

となりますが、別の方法で計算すると

 \displaystyle \frac{1}{3}= \cdots 66667

なので、ちゃんとした値に収束する様子が確認できます。

例2.  \eqref{eq:fxcdt3} の右辺に x=11 を代入して、30項ほど計算すると

 \displaystyle 98802293160247901734554422407598432133536079633388028201890909091

が得られます。別の方法で計算すると

 \displaystyle \frac{1}{11} = \cdots0909091

となるので、この場合もちゃんと収束する様子が確認できます。

一次合同式の解法まとめ

実用的なものからそうでないものまで合わせると、多くの合同式の解法が存在することになります。

1. スタンダードな方法.

ユークリッドの互除法を使用して、ごりごり式変形するもので、これが現在高校数学で学習するスタンダードな方法と思われます。しかし計算は結構大変です。

2. 合同式を変形して解く方法.

センター試験(2019)の不定方程式 - Root One

で述べた方法です。某有名高校参考書にも載っている解法で便利ですが、あまり有名ではないようです。

3. 連分数を使用して解く方法.

不定方程式を連分数で解く - Root One

で扱った内容です。連分数に慣れていればこの方法は実用的でお勧めです。

4. 筆算で解く方法.

10 adic number の世界の割り算 - Root One

で扱った内容です。これは \mod 10^n に限定して紹介しましたが、このケースに限れば現実的な解法です。一応他のケースでも有効ですが、いろいろと混乱が生じる可能性があります。

5. 解析的解法.

今回扱った解法です。二通り紹介しましたが、後者の方法は計算効率がかなり悪いです。しかし何か理論面で役に立つことはあるかもしれません。

6. オイラーの定理を利用する方法.

このブログでは扱っていないですが、非常に有名な方法です。しかし、あまり計算効率は良くありません。

7. 通常の割り算から10adic number に変換する方法.

二つの数の世界を結ぶ等式 (合同式の新解法) - Root One

で扱った内容です。これも現実的には \mod 10^n 限定で考えたほうが混乱は少ないと思います。

以上合同式の解法をまとめてみました。

5の解法は2種類あるので、実質8種類の解法が考えられるということになります。また他の方法も考えられるでしょう。

単純な 1合同式の解法に、ここまでの多様性があるというのは面白いですね。