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二つの数の世界を結ぶ等式 (合同式の新解法)

今回は、「実数」と「10 adic number」の両方に関係するお話です。これまでは、比較することはあっても基本的には、実数は実数、10 adic number は 10 adic number として、別に議論を行ってきました。というのも、これらの数の世界は大きく異なった世界に見えるからです。

しかし、実は両者の数の世界をつなぐ魔法のような等式があります。

この等式を紹介した後、一つの応用例として、1次合同式の解を「通常の実数の割り算」の結果から求める「合同式の新解法」について考えます。

魔法の等式

次の奇妙な等式をここでは印象的に「魔法の等式」と呼ぶことにします。

 \displaystyle \cdots 999.999 \cdots = 0 \tag{1} \label{c999cts}

「魔法の等式」というのは勝手に今命名したものです。一般にそう呼ばれているわけではありません。この等式は

「1= 0.9999999... について議論しているWikipediaの記事」でも少しだけ、言及されています。

導出方法は簡単です。

 \displaystyle 1 = 0.99999\cdots \quad \text{(実数の世界で成立.)}

 \displaystyle -1 = \cdots 99999 \quad \text{(10adicの世界で成立.)}

の両辺を足し合わせれば良いだけです。ただし、これがどういう場合に許されるかは一切考えていません。あくまで形式的な議論です。

実際、\eqref{c999cts} の左辺は、10adicの世界でも実数の世界でも発散します。

つまり意味不明です。しかし、整数部分と小数部分を分離してから

 \displaystyle \cdots 999 = -(0.999 \cdots)

と移項して、さらにイコールを「 → 」に変更して

 \displaystyle \cdots 999 \to -(0.999 \cdots)

と書いてみると、これは10adicの数から実数へのある種の対応を与えていると認識できます。

そして重要なのがこの変換によって、

表現される有理数は不変

であるということです。実際、今の場合、変換前も変換後も -1 という同じ整数を表します.

一般に

(実数の)無限循環小数展開

(10adicの) 無限循環整数展開

の両者は別の数の世界のものですが、それぞれ有理数として表現できます。

例えば、a を一桁の自然数として

 \displaystyle x = 0.aaaaa\cdots

とおくと、

 \displaystyle 10x-x=a

なので、

 \displaystyle x = \frac{a}{9}

という有理数で表現できます。また

 \displaystyle y = \cdots aaaa

とおくと

 \displaystyle y - 10 y = a

なので

 \displaystyle y = -\frac{a}{9}

と(10adicの世界で)表現できるので、

 \displaystyle \cdots aaaaa \to -(0.aaaaa \cdots)

という変換は、変換前と変換後で(異なる世界の数であるものの)同じ有理数

 \displaystyle -\frac{a}{9}

を指すことになります。これは逆向きの変換でも同じです。

この変換は「形式的に」

 \displaystyle \cdots aaaaa.aaaaa \cdots = 0

という「魔法の等式」の一般化となる等式として考えることもできます。

これを以下では「魔法の等式 (ver1)」と呼ぶことにします。

合同式への応用

魔法の等式を利用して、合同式

 \displaystyle 3 x \equiv 1 \mod 1000

を解いてみます。

Step1. 実数の世界で1/3を小数に、循環するまで展開します。

 \displaystyle \frac{1}{3} = 0.3333333\cdots

Step2. 「魔法の等式」を使用して10adicの世界に移行します。

 \displaystyle 0.33333\cdots \to -(\cdots 33333)

繰り返しますが、この変換によって、表現される有理数は変わりません。つまり、右辺は元の有理数1/3を表し、10adic的に

 \displaystyle -(\cdots 33333) = \cdots66667

と変形しても、やはりこれがあらわす有理数 \displaystyle \frac{1}{3} であることに変わりはありません。ただ変わったのは、「実数の世界の1/3」ではなく「10adicの世界の1/3」になったということです。つまり、10adic 的に

 \displaystyle \frac{1}{3} =\cdots66667

が得られたことになります。10adicの世界は有限で切れば\mod 10^n の世界の数の世界になります。今、mod 1000 で考えれば良いので

 \displaystyle \frac{1}{3} \equiv 667 \mod 1000

で充分ですが、これによって、最初の合同式の解は

 \displaystyle x \equiv 667 \mod 1000

となることがわかります。

魔法の等式の一般化

最初に命名した魔法の等式 (ver0とします) はすでに
魔法の等式 (ver1)

 \displaystyle \cdots aaaaa.aaaaa \cdots = 0

の形で一般化しました。これをさらに一般化したものが次です。
魔法の等式 (ver2)

a,b を一桁の非負の数とすると、

 \displaystyle \cdots ababab.ababab\cdots = 0

が形式的に成立。

この等式は、

 \displaystyle \cdots ababab \to -(0.ababab\cdots)

の変換により、表現される有理数は不変であると解釈する。(逆向きの変換

 \displaystyle 0.ababab\cdots \to -(\cdots ababab)

も同じで、やはりこの変換により、表す有理数は変わらない。)
魔法の等式 (ver3)

さらに一般化して、

a_n を非負の1桁の自然数とすると

 \displaystyle \cdots (a_1a_2\cdots a_n) (a_1a_2\cdots a_n) .(a_1a_2\cdots a_n) (a_1a_2\cdots a_n) \cdots =0

が形式的に成立。(解釈方法は上と同じ.)

合同式への応用 (2)

一般化した魔法の等式を利用して、今度は

 \displaystyle 7 x \equiv 1 \mod 1000

を解いてみます。

Step1. 実数の世界で1/7を計算します。

 \displaystyle \frac{1}{7} = 0.142857142857\cdots

Step2. 魔法の等式(一般化バージョン)を利用して変換します。

 \displaystyle 0.142857142857\cdots \to -(\cdots 142857142857)

この変換で得られたのは10adicの世界の数で

 \displaystyle -(\cdots 142857142857) = \cdots 857142857143

と変形できますが、これが表す有理数は不変なので、1/7のままです。したがって

 \displaystyle \frac{1}{7} = \cdots 857142857143

が10adic的に得られます。mod 1000 の解を求めたければ、最初の3桁を取り出せばOKです。

 \displaystyle \frac{1}{7} \equiv 143 \mod 1000

したがって最初の合同式の解として

 \displaystyle x \equiv143 \mod 1000

が得られたことになります。


まとめ

魔法の等式を用いると、限定的ですが「10adic number」 と「実数」という全くことなる数の世界を行き来することができます。今回は合同式への応用を考え、実質的に「実数の割り算」の結果から「合同式の解を得る」という離れ業を行ったことになります。

ただし「離れ業」すぎるので、むやみに使用すると

「何かおかしなことをしているのでは」と疑われるかもしれません。