ルート1の10 adic 連分数展開
今回も adic number のお話です。普通の数の世界で、「ルート1の連分数展開はどうなるのか」などといえば、ちょっと心配されてしまいそうですが、10 adic な世界では別段おかしな話ではありません。
10 adic number の世界には非自明な1の平方根というのがあり、これを求める方法はいくつかありますが、
で導出した
を用いる方法はわかりやすいです。(Maximaなどの数式処理ソフトを使用すると、この式からおそらく100桁くらいは簡単に求められます。)
実際に近似計算すると
のようになりますが、以下、この「1の位の9」だけを利用して連分数展開に挑戦します。
10adic的に収束する連分数(準備)
当然のように通常の世界の連分数とは話が違います。10adicの連分数展開は10adic的に収束しなければなりません。結論から言うと次の形であれば収束します。
ここで は「10と互いに素」で、
は整数です。
このような仮定をすると、上の連分数では、各段階で
となっており、収束する様子を感じることができるかもしれません。
10進数の絶対値の説明はこのブログではしていませんが、
端的にいえば、10で割れるほど小さい数とみなすというのが、基本精神です。
詳細は
10進数の絶対値と距離(外部サイト)
を参照してください。
ルート1の連分数展開
\eqref{afcds} の形に持っていきたいので、
となることを考慮して
と変形します。(通常の連分数展開で、整数部分+小数部分と分割するようなもの?)
右辺第2項を有理化して
と変形します。以下これを繰り返し適用すれば
\begin{align} \sqrt{1} &= 9 + \sqrt{1}-9 \\ &= 9 - \frac{80}{\displaystyle 9 + \sqrt{1}} \\ &= 9 - \frac{80}{\displaystyle 18+ \sqrt{1}-9} \\ &= 9 - \frac{80}{\displaystyle18 - \frac{80}{\displaystyle9+\sqrt{1}}}\\ &= 9 - \frac{80}{\displaystyle18 - \frac{80}{\displaystyle 18 - {}_{\ddots} }} \end{align}
が得られます。しかし、この結果は \eqref{afcds} の仮定を満たしていません。なぜならば分母に18という10と互いに素でない数が来ているためです。そこで、2で割って少し変形すると収束性がはっきりします。
これで、\eqref{afcds} の仮定をみたす連分数展開が得られました。
早速、有限で切って妥当性を近似計算してチェックしてみましょう。
右辺の割り算は10 adic の世界の割り算ですが、10 adic の割り算というのは有限で切ればmod の話に帰着されます。
10 adic number の世界の割り算 - Root One
の手法で筆算も可能ですが、今の場合
をとけばOKです。そして、これをとくと
が得られます。これを見ると、たしかに と4桁一致しています。
まとめ
の連分数展開を行ったところ
が得られました。ただし、計算効率はあまりよくなさそうです。
追記
もう少しきれいな連分数展開が見つかりました。
を9倍するところがポイントです。
\begin{align} \frac{1+9\sqrt{1}}{2} = 1 + \frac{20}{\displaystyle1 + \frac{20}{\displaystyle 1 + \frac{20}{1 +\raise{10pt} {}_{\ddots} } }} \end{align}
Note. これは10adicの世界の等式ですが、通常の実数の世界でも と取れば成立します。