Root One

数学中心のブログです。

分解型複素積分によって原始関数を求める

三角関数  \cos x の逆数の積分

 \displaystyle \int \frac{1}{\cos x} dx

を求める方法はいくつかあります。

今回は、分解型複素積分

https://likethenovel.hatenablog.com/entry/2019/04/20/181423

を用いた方法を調べます。

スタンダードな方法

まず初めに、通常の解法を確認してみます。

\begin{align} \int \frac{1}{\cos x}\,dx & = \int \frac{\cos x}{\cos^2 x} dx \\ & = \int \frac{\cos x}{1-\sin^2 x} \,dx \end{align}

t = \sin x とおくと dt = \cos x \, dx なので

\begin{align} \int \frac{\cos x}{1-\sin^2 x} dx & = \int \frac{dt}{1-t^2} \\ & = \frac{1}{2} \int \left( \frac{1}{1-t} + \frac{1}{1+t} \right)\, dt \\ & = \frac{1}{2} \log \left| \frac{1+t}{1-t} \right| + C \\ & = \frac{1}{2} \log \frac{1+\sin x}{1- \sin x} +C \end{align}

したがって

 \displaystyle \int \frac{1}{\cos x} \, dx = \frac{1}{2} \log \frac{1+\sin x}{1- \sin x} +C

が得られます。

分解型複素積分を用いた方法

これから述べるのは直接的な方法ではありません。いろいろ計算していたら偶然得られたという類のものです。

次の曲線で分解型複素積分

 \displaystyle \int_{C_1+C_2} \frac{1}{z} \, dz

を考えます。

f:id:likethenovel:20190502122138j:plain

分解型複素積分

分解型複素版コーシーの積分定理により

 \displaystyle \int_{C_1+C_2} \frac{1}{z} \, dz =0 

が成立します。これから

 \displaystyle \int_{C_1} \frac{1}{z}  \, dz =\int_{-C_2} \frac{1}{z}  \, dz \tag{1} \label{eq:c152}

が得られます。

これらの曲線はそれぞれ

 \displaystyle C_1 : z= R(\cos t + \sqrt{1} \sin t ) \quad (t \in [-\theta,\theta)]

 \displaystyle -C_2: z=e^{\sqrt{1}t} \quad (t \in [-a,a)]

とパラメータ表示できます。

C_1 上の積分

 \displaystyle z= R(\cos t + \sqrt{1} \sin t ) から

 \displaystyle dz = R(-\sin t + \sqrt{1} \cos t) \, dt

となります。また、

\begin{align} \frac{-\sin t + \sqrt{1} \cos t}{\cos t + \sqrt{1} \sin t} &= \frac{(-\sin t + \sqrt{1} \cos t)(\cos t - \sqrt{1} \sin t)}{\cos (2t)} \\ &=\frac{-\sin(2t)+\sqrt{1}}{\cos (2t)} \end{align}

に注意すれば、

\begin{align} \int_{C_1} \frac{1}{z} \, dz &= \int_{-\theta}^\theta \frac{R(-\sin t + \sqrt{1} \cos t)}{R(\cos t + \sqrt{1} \sin t)} \, dt \\ &=\int_{-\theta}^\theta \frac{-\sin(2t)+\sqrt{1}}{\cos (2t)} \, dt \\ &=2 \sqrt{1} \int_{0}^\theta \frac{1}{\cos (2t)} \, dt \tag{2} \label{eq:sq12t}\end{align}

が得られます。

-C_2 上の積分

\begin{align} \int_{-C_2} \frac{1}{z} \, dz &=\int_{-a}^a \frac{1}{e^{\sqrt{1}t}} \sqrt{1} e^{\sqrt{1}t} dt \\ &= \sqrt{1} \int_{-a}^a \,dt \\ &= 2a\sqrt{1} \tag{3} \label{eq:sq1ma}\end{align}

\eqref{eq:c152} と \eqref{eq:sq12t} , \eqref{eq:sq1ma} により

 \displaystyle \int_{0}^\theta \frac{1}{\cos (2t)} \, dt =  a \tag{4} \label{eq:intf2}

が得られます。したがって、a を決定すれば左辺の積分が求められます。

a の決定

曲線 C_1と曲線 C_2 の交点に注目すると

 \displaystyle e^{\sqrt{1}a} =R( \cos \theta + \sqrt{1} \sin \theta )

が成立します。実部と虚部を比較すると

 \displaystyle \begin{cases} \mathrm{cos h} \, a = R \cos \theta \\ \mathrm{sin h} \, a =R \sin \theta \end{cases}

この2行を加えることで

 \displaystyle e^a = R(\cos \theta + \sin \theta)

が得られます。さらに対数をとると

 \displaystyle a = \log R + \log (\cos \theta + \sin \theta) \tag{5} \label{eq:a52} 

となります。

ここから R を消去します。

 R (\cos \theta + \sqrt{1} \sin \theta) は双曲線上の点なので

 \displaystyle x^2 - y^2 =1

を満たします。よって

 \displaystyle R^2 \cos (2\theta) = 1

つまり

 \displaystyle R^2 = \frac{1}{\cos(2\theta)}

となり、 R が決定します。これを\eqref{eq:a52} に用いると

\begin{align} a &= \log R + \log (\cos \theta + \sin \theta) \\ &= \frac{1}{2} \left( \log R^2 + \log (1 +\sin (2\theta) \right) \\ &= \frac{1}{2} \left( \log \frac{1}{\cos(2\theta)} + \log (1 +\sin (2\theta) \right) \\ &= \frac{1}{2} \log \frac{1 +\sin (2\theta)}{\cos(2\theta)} \end{align}

が得られます。

これと \eqref{eq:intf2} から

 \displaystyle \int_{0}^\theta \frac{1}{\cos (2t)} \, dt =  \frac{1}{2} \log \frac{1 +\sin (2\theta)}{\cos(2\theta)}

が得られます。ただし、双曲線上の点であるので

\begin{align} \displaystyle 0 \leq \theta < \frac{\pi}{4} \end{align}

という制約はあります。

また少し変数変換することで

\begin{align} \displaystyle \int_{0}^\theta \frac{1}{\cos (t)} \, dt =  \log \frac{1 +\sin \theta}{\cos \theta} \quad \left ( 0 \leq \theta < \frac{\pi}{2} \right) \end{align}

が得られます。

スタンダードな方法で得た結果と違って見えますが、少し変形すれば同じものになりますし、実際微分してみても正しいことが確認できます。

感想

とても大変な議論でした。どう見てもスタンダードな方法を取るほうが楽です。しかし、分解型複素積分では、積分路の取り方が無数にあるので可能性というか、夢があります。その夢を信じればきっといつかいいことが起きるかもしれません...???