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分解型複素数と10進整数の指数関数

分解型複素数と、10進整数の世界の共通点は非自明な \sqrt{1} が存在することです。この点に注目して、両者の数の世界を比較すると面白いことが分かるかもしれません。今回は、指数関数をテーマに両者の世界の違いを比較します。

分解型複素数の世界の指数関数

基本となるのは、つぎの分解型複素版オイラーの公式です。

e^{\sqrt{1}x} = \cosh x + \sqrt{1} \sinh x

ここで

 \displaystyle x = \log a

を代入すると

 \displaystyle a^{\sqrt{1}} = \frac{1}{2} \left( \displaystyle a+\frac{1}{a} \right)  + \frac{ \sqrt{1}}{2} \left( \displaystyle a-\frac{1}{a} \right) 

と書くことができます。

(左辺に関しては a^{\sqrt{1} } = e^{\sqrt{1}\log a} を定義とします。)

 例えば、 a = 3 とすると

 \displaystyle 3^{\sqrt{1}} = \frac{5}{3} +  \frac{4}{3}\sqrt{1} \tag{1} \label{eqp1}

が得られます。しかし、左辺を直接計算できるわけではありませんので、この等式を近似計算によって確かめることはできません。

10進整数の世界の指数関数

10進整数の世界では

 \displaystyle e^x = \sum_{n=0}^\infty \frac{x^n}{n!}

の右辺の収束半径が小さいので、これを出発点にして分解型複素数のケースと同じ議論ができません。

この世界では単純に a^x を、 x_n x\in \mathbb{Z}_{10} に収束する整数列として、

 \displaystyle a^x = \lim_{n \to \infty} a^{x_n}

によって、定義します。

分解型複素数は、非自明な \sqrt{1} の存在を仮定した世界でしたが、10進整数の世界では、初めから非自明な \sqrt{1} が自然に存在します。

この自然に存在する\sqrt{1}に対して、10進整数の世界でも \eqref{eqp1} は成り立つかというのが今回調べたいお話です。

結論から言うと、全く同じではないですが、ほとんど同じ関係式が成立します。

次が10進整数の世界で成り立ちます。

 \displaystyle 3^{\sqrt{1}} = \frac{4}{3} +  \frac{5}{3}\sqrt{1} \tag{2} \label{eqp2}

(ただし、\sqrt{1} = \cdots1249 としています。この「1の平方根」に関しては

https://shabonlearning.com/Math/j_adic_number6.html を参照.)

非常に似ていますが、\eqref{eqp1}と\eqref{eqp2}では\sqrt{1}倍ずれる結果となっています。

そして、注目したいのは、\eqref{eqp1}は近似計算で確認できませんが、\eqref{eqp2}はそれが可能であるということです。

実際 \sqrt{1} の近似値として最初の4桁1249をとり、近似計算をしてみます。

\eqref{eqp2} の左辺は

 \displaystyle 3^{\sqrt{1}} \fallingdotseq 3^{1249}= \cdots 3502083

と近似計算でき、\eqref{eqp2} の右辺は

 \displaystyle \frac{4}{3} +  \frac{5}{3}\sqrt{1} \fallingdotseq \frac{4}{3} +  \frac{5}{3}(1249)  = \cdots 0002083

と近似計算できます。

これらの結果から、5桁一致していることが確認できます。

このように近似計算することで、\eqref{eqp2} の妥当性をチェックできるわけですが、どうやってこれを証明するのかという疑問が残ります。

ですが、この導出方法は少し面倒ですので、また機会を改めたいと思います。 

まとめ

分解型複素数の世界では

 \displaystyle 3^{\sqrt{1}} = \frac{5}{3} +  \frac{4}{3}\sqrt{1} 

が成立し、10進整数の世界では

 \displaystyle 3^{\sqrt{1}} = \frac{4}{3} +  \frac{5}{3}\sqrt{1}

が成立する。両者を比較すると不思議と\sqrt{1}倍ずれる。また後者では両辺の近似計算が独立に可能で、妥当性のチェックができる。