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数学中心のブログです。

高次方程式の解を表示する

このブログではp 進的話題ばかり取り上げているので、最初にことわっておきますが、

今回は通常の実数のお話です。

2次方程式の解の公式は中学数学で教わりますが、3次方程式にも解の公式が存在します。とはいっても大変複雑です。また、この解の公式を使用して解の近似計算をするのはもとの問題より難しくなっているといえるかもしれません。

ということで、今回は解の公式を使用しないで解の表示式を得る方法について考えていきたいと思います。

そこで参考にするのが、2次方程式の根の連分数と多重平方根による表示です。

連分数を使用した解の表示方法

例えば、有名な例でいえば黄金比を解に持つ方程式があります。

 \displaystyle x^2=x+1 \qquad \text{(eq1)}

がそれです。この解の一つは

 \displaystyle x = \frac{1+\sqrt{5}}{2}

となるのですが、これは黄金比と呼ばれるものです。

(eq1)の両辺をxで割ると

f:id:likethenovel:20190320170642j:plain  

が得られます。

この関係式を繰り返し適用していくと連分数が現れます。

\begin{eqnarray*} x &=& 1 + \frac{1}{x} \\ &=& 1 + \frac{1}{1+\cfrac{1}{x}} \\ &=& 1 + \frac{1}{1+\cfrac{1}{1+\cfrac{1}{x}}} \end{eqnarray*}

厳密には収束の話があるので難しいですが、これを無限にくりかえして行けば

  \displaystyle x = \frac{1+\sqrt{5}}{2}= 1+\cfrac{1}{1+\cfrac{1}{1+\cfrac{1}{1+\cfrac{1}{\lower{5pt}\ddots }}}}

という有名な連分数表示が「形式的」に得られはします。(ここで、形式的にとは、収束するかは知らないし、本当にイコールなのかは知らないという、かなりいいかげんな意味で使っています。)

多重平方根を利用した解の表示方法

多重平方根というのは、平方根の中に平方根があるというものをいいます。

例えば

 \displaystyle \sqrt{2+\sqrt{2+\sqrt{2}}}

のようなものです。黄金比については、次の多重平方根表示が知られています。

 \displaystyle \frac{1+\sqrt{5}}{2} = \sqrt{1+ \sqrt{1+ \sqrt{1+ \sqrt{\cdots}}}}

これは次のように導けます。

(eq1)の両辺で平方根をとると

 \displaystyle x = \sqrt{1+x}

が得られます。この関係式を

 \displaystyle x = \sqrt{1+x} = \sqrt{1+\sqrt{1+x}} = \sqrt{1+\sqrt{1+\sqrt{1+x}}}

というように無限に繰り返せば、無限多重平方根表示が得られます。

厳密な話は避け、ここではとにかく、このような変形で収束しそうな解の表現が得られるということのみに注目します。

3次方程式の解

上の議論をふまえて、3次方程式に挑戦します。

例えば

 \displaystyle x^3 = x^2 +1 \qquad \text{(eq2)}

という形ならば、両辺を x^2で割ることで

 \displaystyle x = 1 + \frac{1}{x^2}

が得られます。この関係式を繰り返し用いると上の議論と同じようにして

 \displaystyle x= 1 + \cfrac{1}{\left( 1 + \cfrac{1}{\left( 1 + \cfrac{1}{\left( \dots \right)^2} \right)^2} \right)^2} \qquad \text{(eq3)}

が形式的に得られます。

妥当性のチェック

計算機で、(eq2)の実根を計算してみると

1.465571231...

が得られました。一方(eq3)の結果を16回ほどで打ち切ったものを計算すると

1.466248529...

となりましたので、真の値と3桁合います。どうやら収束はかなり悪いですが正しい値になるようです。

3次方程式の解(2)

次は少し形を変えて

 \displaystyle x^3 = 1+ x \qquad \text{(eq4)}

という方程式の解の表示を探します。

(eq4)の両辺を1/3乗すると

\begin{align}\displaystyle x = \sqrt[3]{1+ x} \end{align}

が得られます。この関係式をくりかえし適用していきます。

\begin{align} \displaystyle x = \sqrt[3]{1+ x}  = \sqrt[3]{1+ \sqrt[3]{1+ x} } \end{align}

よって形式的にですが

\begin{align} \displaystyle x = \sqrt[3]{1+ \sqrt[3]{1+ \sqrt[3]{1+ \sqrt[3]{1+ \cdots } } } } \qquad \text{(eq5)} \end{align}

 という表示式が得られました。

妥当性のチェック

計算機を用いて根を計算すると

1.32471795724...

が得られます。一方(eq5) の表示式を10回の繰り返しで打ち切ったものを用いると

1.32471784616...

が得られ、今度は7桁一致します。収束性のチェックは単調増加は明らかなので、上に有界であることを言えばOKですが、それも簡単ですので、厳密にも収束は示せそうです。

まとめ

関数の合成操作をくりかえし用いるテクニックで、いくつかの種類の方程式は高次程式であっても表示できそうです。ただし何の意味があるかは不明です。美しければ観賞用として意味はありますがどうでしょうか。

追記

 \displaystyle x^3 = x^2 +1 \qquad \text{(eq2)}

の多重立方根による解の表示も探してみたいと思います。

3 次方程式の x^2 の項というのは、適当に a を取れば

 \displaystyle x = y + a

という変換によって消去できます。今回は

 \displaystyle x = y + \frac{1}{3}

とすれば良く、(eq2) は

 \displaystyle y^3 = \frac{y}{3} + \frac{29}{27}

と変形できます。

さらに右辺の y の係数を 1 にするため

 \displaystyle z = \sqrt{3}y

の変換をすると

 \displaystyle z^3 = z + \frac{29\sqrt{3}}{9}

が得られます。見やすくするため

 \displaystyle \alpha =\frac{29\sqrt{3}}{9}

とおくと

 \displaystyle z^3 = z + \alpha

となります。これから、(3次方程式の解(2))と同様の考え方で

\begin{align} \displaystyle z =\sqrt[3]{\alpha+ \sqrt[3]{\alpha+ \sqrt[3]{\alpha+ \sqrt[3]{\alpha+ \cdots } } } } \end{align}

が得られます。

最初の変数に戻せば

\begin{align} \displaystyle x = \frac{1}{3} + \frac{1}{\sqrt{3} } \sqrt[3]{\alpha+ \sqrt[3]{\alpha+ \sqrt[3]{\alpha+ \sqrt[3]{\alpha+ \cdots } } } } \qquad \text{(eq6)} \end{align}

が得られます。

この多重立方根を 10 回ほど繰り返して近似計算をすると

1.465571232...

が得られますが、これは真の値

1.465571231...

と9桁一致するので収束は良いようです。

収束性が問題なので、しっかりと証明できたわけではないですが、あまり堅いことをいわなければ、(eq3) と (eq6) が等しいはずです。つまり

\begin{align} 1 + \cfrac{1}{\left( 1 + \cfrac{1}{\left( 1 + \cfrac{1}{\left( \dots \right)^2} \right)^2} \right)^2} = \frac{1}{3} + \frac{1}{\sqrt{3} } \sqrt[3]{\alpha+ \sqrt[3]{\alpha+ \sqrt[3]{\alpha+ \sqrt[3]{\alpha+ \cdots } } } }\end{align}

が一応得られたことになります。

黄金比の場合だとこれに対応するのは

  \displaystyle 1+\cfrac{1}{1+\cfrac{1}{1+\cfrac{1}{\lower{5pt}\ddots }}} = \sqrt{1+\sqrt{1+\sqrt{1+\cdots}}} \qquad \text{(eq7)}

という関係式になりますが、この表現はずっと簡潔ですね。

ちなみにですが、数式処理ソフトの Maxima を利用するとこのような関数合成の計算は標準的に用意された関数を利用してできます。具体的には rreduce というものを利用します。この関数については

https://shabonlearning.com/

で詳しく述べてあります。少し使用法は難しいですが、慣れてしまえばいろいろな計算ができるのでおすすめです。

追記2

 \displaystyle x^3 = x^2 +1 \qquad \text{(eq2)}

から x^2 の項を x+\frac{1}{3} の変換で消去するのは少しだけ強引かもしれません。

次の方法はもう少しスマートです。

(eq2) の両辺を (2/3) 乗して

 \displaystyle x^2 = (1+x^2)^{2/3}

を得ます。ここで  y=x^2 とおくと

 \displaystyle y = (1+y)^{\frac{2}{3} }

が得らるので、この関係式を

 \displaystyle y = (1+y)^{\frac{2}{3} } = (1+ (1+y)^{\frac{2}{3} } )^{\frac{2}{3} }  = \cdots 

という感じで無限に繰り返して、変数をもとに戻すと

 \displaystyle x^2 = (1+ (1+ (1+ (1+ (1+ (\cdots )^{\frac{2}{3} } )^{\frac{2}{3} } )^{\frac{2}{3} } )^{\frac{2}{3} } )^{\frac{2}{3} } )^{\frac{2}{3} }

が得られます。平方根をとると

 \displaystyle x = (1+ (1+ (1+ (1+ (1+ (\cdots )^{\frac{2}{3} } )^{\frac{2}{3} } )^{\frac{2}{3} } )^{\frac{2}{3} } )^{\frac{2}{3} } )^{\frac{1}{3} }

となります。これと(eq3)をイコールで結ぶと

 \displaystyle 1 + \cfrac{1}{\left( 1 + \cfrac{1}{\left( 1 + \cfrac{1}{\left( \dots \right)^2} \right)^2} \right)^2} = (1+ (1+ (1+ (1+ (1+ (\cdots )^{\frac{2}{3} } )^{\frac{2}{3} } )^{\frac{2}{3} } )^{\frac{2}{3} } )^{\frac{2}{3} } )^{\frac{1}{3} }

が得られます。(右辺、一番右の指数だけ(1/3)乗になっている点に注意.)

黄金比の関係式 (eq7) との対応を考えるとこちらのほうがきれいでしょうか。