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意外な和の収束

冒頭から問題です。

 \displaystyle \sum_{n=1}^\infty (n\cdot n!) = 1 + 2\cdot 2! + 3\cdot 3! + \cdots

はどのような数になるでしょうか。

(今回も\mathbb{Z}_{10} の話です。これについては過去の記事を参照してください.)

階乗の性質

階乗 n!n が増加すると急速に増加します。例えば

 \displaystyle 5! = 5\cdot4\cdot3\cdot2 \cdot 1= 120

 \displaystyle 10! = 10 \cdot 9 \cdot \cdots \cdot 1 = 3628800

というよう感じです。実数の世界では明らかに

 \displaystyle \lim_{n\to \infty} n! = \infty

となります。しかし、 \newcommand{\zten}{\mathbb{Z}_{10}} \ztenの世界では0に収束します。というのもこの世界では

 \displaystyle \cdots00000 =  0

と認識され、1の位から見て0が続けば続くほど小さい数であるとみなされる世界だからです。(詳細は情報系学習サイト (数学→\ztenの絶対値と距離)にあります。)

実際

 \displaystyle 100! = 93\cdots(\text{途中略})\cdots 864000000000000000000000000

となり、\ztenの世界で 100! は非常に小さな数になることがわかります。

まとめると実数の世界では

 \displaystyle \lim_{n\to \infty} n! = \infty \quad (\mathbb{R} )

でしたが、\zten の世界では

 \displaystyle \lim_{n\to \infty} n! = 0 \quad (\zten)

となるということです。そして、実はこの無限和でさえも収束し

 \displaystyle \sum_{n=0}^\infty n! = \cdots39052556442336528920420940314

のような数に収束していきます。ただし、この収束値がどのような値になるかは残念ながら不明です。

冒頭の問題の解答

無限和

 \displaystyle \sum_{n=1}^\infty (n\cdot n!) = 1 + 2\cdot 2! + 3\cdot 3! + \cdots

\zten の世界で収束するのですが、この和は規則的な数に収束します。その様子を確認してみましょう。

1×1! 1
2×2! 4
3×3! 18
4×4! 96
5×5! 600
6×6! 4320
7×7! 35280
8×8! 322560
9×9! 3265920
10×10! 36288000
11×11! 439084800
12×12! 5748019200
13×13! 80951270400
14×14! 1220496076800
15×15! 19615115520000
16×16! 334764638208000
17×17! 6046686277632000
18×18! 115242726703104000
19×19! 2311256907767808000
20×20! 48658040163532800000
21×21! 1072909785605898240000
22×22! 24728016011107368960000
23×23! 594596384994354462720000
24×24! 14890761641597746544640000
25×25! 387780251083274649600000000
合計 403291461126605635583999999

この結果を信じれば、最初の6桁が999999となっていることが分かります。これは偶然ではなく、実は無限に足していけば、ずっと9が続き

 \displaystyle \sum_{n=1}^\infty (n\cdot n!) = \cdots999999

が成り立ちます。右辺は決して無限に大きい数だから \cdots999999 と表現したわけではありません。文字通り9が無限に続く数が得られるということを意味しています。 また、\zten の世界でこれは -1 に等しいので

 \displaystyle \sum_{n=1}^\infty (n\cdot n!) = \cdots999999=-1

とも表現できます。

種明かし

証明は簡単です。

 \displaystyle f(n) = n!

とおくと

 \displaystyle f(n+1)-f(n) = n \cdot n!

となります。あとは両辺 n=1 から N まで和を取れば、

 \displaystyle f(N+1)-f(1) = \sum_{n=1}^N (n \cdot n!) \qquad \text{(eq1) }

が得られます。

 \displaystyle \lim_{N \to \infty} f(N) = \lim_{N \to \infty} N!=0

なので、(eq1)で極限をとれば

 \displaystyle -f(1) = \sum_{n=1}^\infty (n \cdot n!)

が得られます。f(1)=1なので結局

 \displaystyle \sum_{n=1}^\infty (n \cdot n!) =-1

が得られ、証明が完了します。